緊急時の遺言書〈危急時遺言〉
遺言書を作成する方法として主に用いられているのは、普通方式となる「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類です。
これらの遺言ができない状況下にある場合のみ認められるのが特別方式であり、そのなかのひとつに「危急時遺言」というものがあります。
危急時遺言とは、遺言者に死亡の危急が迫っており、署名・押印できない状態にある場合に用いる遺言方法です。危急時遺言には「一般危急時遺言」と「難船危急時遺言」がありますが、ここでは一般危急時遺言に絞ってご説明いたします。
死亡の危急が迫った際の「一般危急時遺言」
病気やケガ等によって遺言者に死亡の危急が迫っている場合に認められるのが、「一般危急時遺言」です。作成の際には証人3名以上の立ち会いが必要であり、証人は遺言者が口述した遺言を手書きもしくはパソコンを使って書面化します。
遺言者が口述できない状態にある場合は手話通訳による申述も可能ですが、録音は無効となるため注意が必要です。
遺言者と書面化した者を除く証人2名で遺言内容を確認し、間違いがなければ証人3名で署名・押印します。なお、完成した書面は遺言の日から20日以内に家庭裁判所へ請求し、確認を得ないと効力を失うことになります。
証人または利害関係人は、この期限内に必ず請求するよう心がけましょう。
〔請求時に家庭裁判所へ提出する書類〕
- 書面化した遺言のコピー
- 病院の診断書
- 遺言者ならびに立ち会った証人全員の戸籍謄本
死亡の危急が去り、遺言者が普通方式で遺言書を作成できる状態になった時点から6か月間生存していた場合には、特別方式で作成した遺言は無効となります。
このように、死亡の危急が迫っている状態であっても遺言書を作成することはできますが、場合によっては遺言を残す前に亡くなってしまうこともあるかと思います。
そのような事態を避けるためにも、遺言書は元気なうちに作成しておくことをおすすめいたします。